Vulnerability(こころの脆さ)こそリーダーシップの核心 コアメンバー 加藤英子
- 山本 明美
- 4月15日
- 読了時間: 3分
更新日:4月15日
自分らしいリーダーシップを求めて
リーダーシップと聞くと、力強く明確なメッセージを発信してメンバーを率いる姿を思い浮かべ、自分には関係のないことと感じる方も少なくないかもしれません。しかし、時代の変化とともにリーダーシップのあり方も多様化していて、現在では“自分らしさ”を軸にしたオーセンティック・リーダーシップが注目されています(Bill George, Harvard Business Review, 2007)。
私自身、指導的立場になるにつれ、自分らしいリーダーシップとは?と自問するようになり、さまざまなリーダーシップに関する書籍に触れてきました。その中で共通して重視されていたのがVulnerability(ヴァルネラビリティ;こころの脆さ)です。この概念は、社会福祉学者Brené Brownの研究により広く知られるようになりました。リーダーが自らの失敗や不安をさらけ出すことでメンバーも率直に意見を述べやすくなり、チームの心理的安全性が高まってチーム全体の創造性や問題解決能力が向上すると言われています。他人に弱さを見せるということは勇気のいることですが、それがメンバーの共感性や信頼を生んでクリエイティブで感情的知性(EQ)の高いチームに成長できるのです(TED Talks“The power of vulnerability” 2010, Daring Greatly 2012)。
私たち医療者は日々、不確実性やリスクに直面しながらそれにどう向き合っていくべきかを問われています。時に厳しい場面に遭遇しうるからこそ、心理的安全性の高い職場環境を整えることが不可欠であり、自らの弱さを受け容れつつ共感的リーダーシップを実践していきたいと思っています。
本学会We Lead Japanの設立に寄せて
私は、小児科医、新生児科医としてのキャリアを積み重ねていく中で、2008年に名古屋大学小児科医局として子育て支援制度を設立しました。以降、キャリアを継続する女性医師が増えてきていることを嬉しく思う一方で、子どもの有無、勤務形態、当直の有無などによってどこか無意識の分断が生じているような空気にもやもやとした感情を抱くこともありました。そんな中、2020年に日本小児科学会のダイバーシティ・キャリア形成委員会の活動を通じて赤嶺陽子さんと出会いました。すべての医師が属性によらず自らの可能性を拡げられるように、挑戦したい仕事を任されたときに躊躇せずに一歩を踏み出せるように、私たちは意気投合して医師のリーダーシップ育成を行う場を作りたいという目標に向かって歩み始めました。以来、豊富な知識・経験・実行力を備えた理事やコアメンバーの方々とともに対話を重ね、学びながら準備を進めてまいりました。
本学会の活動を通じて、オーセンティック・リーダーシップという新たな価値観が広がり、医師一人ひとりのウェルビーイング向上につながることを心より願っています。
